日韓間のビジネスにおいて、言語の壁はコミュニケーションコストを高め、契約内容の誤解・交渉の失敗・信頼関係の毀損に直結するリスクを持っています。しかし「韓国語が話せる通訳者を連れていけば大丈夫」という認識は必ずしも正確ではありません。通訳・翻訳はスキル領域が細分化されており、目的に合わない専門家の起用が予期せぬ問題を生むことがあります。本記事では、日韓ビジネスシーンにおける通訳・翻訳の種類・選び方・よくあるトラブルと対策を体系的に解説します。

 

通訳の種類と使い分け

逐次通訳(순차통역)と同時通訳(동시통역)の違い

逐次通訳は話者が話した後に通訳者が訳すスタイルで、商談・打ち合わせ・インタビューに適しています。コスト効率が高く、通訳者が内容を補足・確認しながら進めやすい反面、時間が長くかかります。同時通訳は話と並行して訳すスタイルで、カンファレンス・講演・大型交渉会議に使用されます。高い集中力を要するため通常2人以上のペアで行われ、コストも逐次の2〜3倍以上になります。

専門分野の一致が品質を左右する

通訳者の専門分野は法務・医療・技術・金融・食品など多岐にわたります。例えば、製造業のサプライチェーン交渉に一般ビジネス通訳者を起用すると、専門用語の誤訳リスクが高くなります。特に「契約書上の用語の解釈が交渉ごとの合意を覆した」というケースは日韓間でも発生しており、専門領域の一致確認は必須です。

 

翻訳(번역)の種類と品質管理

翻訳の3分類:文書翻訳・法律翻訳・マーケティング翻訳

文書翻訳はカタログ・マニュアル・社内文書など汎用性の高い翻訳です。法律翻訳は契約書・約款・法的通知などを扱い、用語の正確性・法的効力の担保が求められます。マーケティング翻訳はキャッチコピー・広告文・ウェブサイト文言などの翻訳で、単なる直訳ではなく現地消費者に自然に届く表現力が必要です。

機械翻訳(AI翻訳)の活用とリスク

DeepL・Papago(파파고:ネイバーの翻訳サービス)は日韓間翻訳の精度が高く、速度・コストの観点から非常に有用です。しかし契約書・法的書類・公的申請書類への機械翻訳の直接使用はリスクがあります。機械翻訳は文脈・法律的含意・欠けたニュアンスの処理が完全ではなく、専門家によるレビュー(Post-Editing)を前提とした利用が推奨されます。

韓国の交渉スタイルと通訳者への期待役割

韓国ビジネスでは意思決定構造がトップダウン型であることが多く、現場担当者が「検討します」と回答しても、最終決定が覆されるケースがあります。通訳者には単なる言語変換だけでなく、「今相手はどの程度本気か」「この発言の背景は何か」といった文化的文脈の補足を期待する場面もあります。事前に通訳者と「交渉の目標・絶対に譲れないポイント・懸念点」を共有しておくと、商談の精度が大幅に上がります。

また、韓国では빨리빨리(パリパリ:素早く・てきぱき)文化が根強く、意思決定と実行のスピード感は日本よりも速い傾向があります。交渉が進展したら通訳者を介して即座に議事録・合意内容を書面化するプロセスを設計しておくことが、後々のトラブル予防になります。

 

法的文書の翻訳:特に注意すべきポイント

韓国語の法律文書を日本語に翻訳する際に特に注意すべき点として、①韓国法律用語と日本法律用語の不一致、②갑・을(甲・乙:契約の当事者表記)の日本語訳の統一、③管轄裁判所・準拠法条項の明確な訳出、があります。

特に韓国に存在しない日本法律概念やその逆も多く、直訳では法的意味が伝わらないケースがあります。この種の翻訳は법무법인(法律事務所)提携の翻訳士か、両国の法制に精通した専門家への依頼を強く推奨します。

 


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