韓国市場に参入する前に、商標の現地登録は最優先で対処すべき知財保護策のひとつです。韓国は「선출원주의(先願主義)」を採用しており、日本で長年使用しているブランド名であっても、韓国で登録していなければ第三者に先取りされるリスクがあります。実際に日本の著名ブランドが韓国で商標を先取りされ、現地での販売開始前に多額の和解金支払いを余儀なくされた事例も複数存在します。本記事では、韓国特許庁(KIPO)への出願手順・ハングル表記の扱い・異議申立・不使用取消審判まで、実務に必要な知識を体系的に解説します。
韓国商標制度の基本:先願主義と登録主義
韓国商標法は日本と同様に先願主義・登録主義を採用しています。つまり、どれだけ長期間商標を使用していても、登録なしには法的保護が原則として受けられません(ただし「주지・저명 상표(周知・著名商標)」には一定の例外的保護があります)。
韓国では商標の不使用を理由とした「불사용취소심판(不使用取消審判)」制度があり、正当な理由なく登録後3年以上不使用の商標は取消しを申請できます。競合による悪意ある先占への対抗手段として活用できる一方、自社の登録商標も使用実績の維持が重要です。
出願前に必ずやるべき先行調査
出願前の先行調査(선행상표 조사)は、出願費用・時間の無駄を避けるために必須です。特허정보검색서비스(KIPRIS)でオンライン無料検索が可能ですが、検索範囲や判断基準が専門的なため、現地弁理士による精査を推奨します。
特に注意が必要なのは、完全一致だけでなく「유사 상표(類似商標)」との関係です。韓国商標法では称呼(読み方)・外観・観念のいずれかが類似していると判断されると、登録が拒絶される可能性があります。また、ハングル表記・英語表記・漢字表記はそれぞれ別の商標として扱われます。
ハングル表記・音訳の別途登録が必要な理由
日本企業が最も見落としやすいのが、ハングル音訳・翻訳表記の商標登録です。例えば「〇〇(日本語ブランド名)」の英語表記と、ハングル音訳表記は、韓国商標法上は別の商標として独立して扱われます。
実際の事例として、日本で登録済みの和菓子ブランドがハングル音訳表記の商標を未登録だったため、韓国の模倣品業者がハングル表記を先取り登録し、本物のメーカーが韓国向けPR活動を展開する際に商標侵害を主張された事案があります。英語・日本語ロゴのほか、ハングル表記(音訳・意訳の両方)を早期に出願することを強く推奨します。
KIPO出願の手順と費用
韓国特許庁(KIPO:특허청)への出願は、①出願書類の準備、②オンライン(특허로 시스템)での提出、③方式審査→実体審査→登録決定の流れで進みます。審査期間は通常12〜18ヶ月程度です。
出願費用(관납료)は1区分あたり約62,000ウォン(電子出願の場合)で、登録料は10年分で約211,000ウォン(第1〜3区分の場合)です。弁理士手数料は事務所により異なりますが、1区分あたり30〜50万円程度が目安です。複数区分を出願する場合、マドリッド協定に基づく国際商標出願(IR出願)を検討すると日韓同時出願よりコスト効率が高くなるケースがあります。
商標が先取りされていた場合の対処法
既に第三者に先取りされてしまっている場合の対応策は以下の通りです。
- 이의신청(異議申立):公告期間中(2ヶ月間)に類似性・先使用権等を根拠に申立てができます。
- 무효심판(無効審判):登録後でも、登録無効事由がある場合は無効審判を請求できます。
- 불사용취소심판(不使用取消審判):登録から3年以上、正当な理由なく使用されていない商標は取消しを請求できます。
- 협상による 권리 양수(権利譲受):悪意の先占者との交渉により、商標権の買い取りや使用許諾交渉を行う選択肢もあります。法的対抗手段と並行して検討することが望ましいです。
コリアリサーチでは、韓国での商標先行調査・現地弁理士の紹介・知財保護戦略のご相談を受け付けています。進出前の早い段階での対処が最もコスト効率が高く、リスクを最小化できます。